• トップ
  • アルミダイカストの品質を決める材料の種類と選び方

アルミダイカストの品質を決める材料の種類と選び方

目次
index

アルミダイカストは、複雑な形状の部品を高い寸法精度で大量生産できる工法です。自動車のエンジン部品やEV(電気自動車)の軽量化部品、家電製品、産業機械など、私たちの身の回りのあらゆる製品に採用されています。

このアルミダイカスト製品の品質、コストや性能に大きく関わるのが「材料(合金)」の選定です。 ダイカスト用のアルミ合金は、純アルミニウムにケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)などの添加元素を配合することで作られます。そしてその添加する成分とその比率によって、流動性や、機械的強度、耐食性、熱伝導率などが大きく変化します。

本コラムでは、アルミダイカストで主に使用される合金の特徴と、最適な材料の選び方について詳しく解説します。

ダイカスト用アルミ合金(ADC)の特徴とは

日本産業規格(JIS)において、ダイカスト用のアルミニウム合金は「ADC(Aluminum Die Casting)」という記号で分類されています。 アルミダイカスト合金は、砂型鋳造や重力金型鋳造用のアルミ合金とは求められる特性が異なります。溶けた金属(溶湯)を高速・高圧で金型に射出するため、瞬時に金型の隅々まで流れ込む「優れた流動性」と、金型への「焼き付きにくさ」、そして急速に冷却される際の「割れにくさ(耐熱裂性)」が求められます。

これらの特性を満たすために、用途に合わせて様々なADC材が開発されています。

代表的なアルミダイカスト合金の種類と特徴

現在、JIS規格で規定されているADC材の中で、製造現場で特によく使われる代表的な材料をピックアップして解説します。

 
1. ADC12(Al-Si-Cu系):標準材

国内で生産されるアルミダイカスト製品の90%以上を占めると言われているのが、このADC12です。ケイ素(Si)を9.6〜12.0%、銅(Cu)を1.5〜3.5%含んでいます。 最大の特徴は「鋳造性の高さ」と「機械的性質のバランス」です。ケイ素が多く含まれているため溶湯の流動性が非常に良く、複雑な形状や薄肉の製品でも湯回り不良を起こしにくいというメリットがあります。また、銅の働きにより機械的強度が高く、切削などの二次加工もしやすい特徴を持ちます。 特別な要求がない限り、まずはADC12をベースに設計・検討を進めるのがダイカスト設計の基本となります。
 

  • 主な用途:自動車のシリンダーブロック、トランスミッションケース、各種カバー類、産業機械部品など。

 
2. ADC10(Al-Si-Cu系):熱伝導性と電気伝導性に優れる

ADC12と同じAl-Si-Cu系ですが、銅(Cu)の含有量がADC12よりも少なく設定されています。銅が少ない分、熱伝導率と電気伝導率がADC12よりも優れており、伸びや耐衝撃性も若干高くなります。 熱を逃がす性質に優れているため、放熱が求められる部品に多用されます。また、カシメ加工(塑性変形を利用した接合)を行う部品にも適しています。

  • 主な用途:ヒートシンク(放熱フィン)、モーターハウジング、電子機器のケース、自動車用電装部品など。

 
3. ADC5 / ADC6(Al-Mg系):耐食性と強度

マグネシウム(Mg)を主添加元素とする合金です。ADC12などのSi-Cu系合金と比較して、耐食性が極めて高く、引張強さや伸び、衝撃値といった機械的性質にも優れています。また、アルマイト処理(陽極酸化処理)を美しく施すことができる数少ないダイカスト合金でもあります。 一方で、決定的な弱点は「鋳造性の悪さ」です。流動性が低く、凝固時の収縮率が大きいため、ひび割れ(熱裂け)や湯ジワ、金型への焼き付きといった鋳造欠陥が非常に発生しやすくなります。この材料を扱うには、ダイカストメーカーの高い技術力と徹底した金型温度管理・方案設計が不可欠です。

  • 主な用途:船外機部品、屋外用照明器具、バイクのブレーキレバーや装飾部品、高い強度が求められる足回り部品など。

 
4. ADC1 / ADC3(Al-Si系):耐食性と流動性

銅(Cu)を含まず、ケイ素(Si)をメインに添加した合金です。銅を含まないため耐食性に優れており、かつケイ素のおかげで流動性も良好です(ADC3はマグネシウムを微量添加し強度を上げています)。 「複雑な形状で鋳造性が求められるが、水回りや屋外で使うためサビに強い材料が欲しい」といったケースに適しています。

  • 主な用途:船舶用部品、建築用金物、通信機器の筐体など。

添加元素がダイカスト部品にもたらす効果(Si、Cu、Mgの役割)

材料を正しく選定するためには、各元素がアルミにどのような影響を与えるかを知っておくことが有用です。

ケイ素(Si):溶湯の流動性を飛躍的に高め、凝固時の収縮(引け巣)を抑えます。ダイカストの「作りやすさ」を担保する必須元素ですが、多すぎると熱伝導率が下がり、アルマイト処理の発色も黒ずんでしまいます。

銅(Cu):強度や硬度を高め、切削加工性を向上させます。しかし、添加量が増えると耐食性が低下し、熱伝導率も落ちる傾向があります。

マグネシウム(Mg):強度と耐食性を高め、美しいアルマイト処理を可能にします。反面、流動性が悪化し、鋳造割れを引き起こしやすくなります。

要求仕様から導くアルミダイカスト合金の選び方

製品の設計要件に合わせて、どのように材料を選定すべきか、具体的な基準を解説します。

 
① コストダウンと量産性を最優先する場合

推奨材料:ADC12

特別な耐食性や放熱性、特殊な表面処理が不要な機構部品・カバー部品であれば、ADC12がおすすめです。材料の流通量が多く安価であることに加え、鋳造欠陥が発生しにくいため歩留まりが高く、トータルコストを低く抑えることができます。また、肉厚を0.5mm〜1mm程度にする「超薄肉ダイカスト」による軽量化を狙う場合も、流動性に優れるADC12が適しています。

 
② 高い放熱性(冷却性能)が求められる場合

推奨材料:ADC10、または高熱伝導特殊合金

LED照明のヒートシンクや、ECU(電子制御ユニット)のケースなど、内部の熱を効率よく逃がす必要がある場合は、熱伝導率に優れるADC10を選定します。さらに高い放熱性が求められる場合は、各アルミメーカーが独自に開発している「高熱伝導ダイカスト合金(HT-1など)」の採用も検討します。

 
③ 屋外や水回りで使用し、サビを防ぎたい場合

推奨材料:ADC3、ADC5、ADC6

船外機部品や屋外通信アンテナなど、塩害や水分の影響を受ける環境下では、銅を含まず耐食性に優れた材料が必要です。形状が複雑で鋳造性を重視する場合はADC3を、強度や意匠性(表面処理)をより重視する場合はADC5やADC6を選定します。

 
④ 美しい外観(アルマイト処理)が必要な場合

推奨材料:ADC5、ADC6

アルミダイカスト部品にデザイン性や耐摩耗性を持たせるためアルマイト処理を施したい場合、ADC12は不向きです(含有するSiとCuの影響で表面が黒灰色になり、斑点が出やすいため)。外観品質としてアルマイト処理が必要な場合は、ADC5やADC6を選定する必要があります。ただし、先述の通り鋳造が非常に難しいため、設計段階から抜き勾配やRの大きさなど、形状について考慮する必要があります。

ADC12や異種材のアルミダイカストもおまかせください

アルミダイカストにおける材料選びは、「製品に求める機能」と「鋳造のしやすさ(製造コスト)」を最適化することが重要です。 「とにかく強度が欲しいから」と安易にADC5やADC6を指定すると、鋳造時の不良が多発し、結果的にコストが跳ね上がり、量産が立ち行かなくなる可能性もあります。

強度不足が懸念される場合は、材料を変更するのではなく「ADC12のままリブを追加して構造設計で強度を補う」、あるいは「必要な箇所に鉄ピンを鋳込むインサート成形を採用する」といった、工法によって解決できることも多々あります。

軽量・薄肉ダイカスト開発センターを運営する帝産大鐘ダイカスト工業では、お客様のご要望に応じて、ADC12以外のアルミダイカストにも対応いたします。当社の実績では、ADC5、ADC6、ADC10、AlSi10Mgの加工実績があり、お客様ご指定の材料についても、トライショットが可能です。是非お気軽にご相談ください。

>>お問い合わせはこちら
>>当社のADC12以外のアルミダイカスト生産について詳細をみる

column

一覧

「」の記事

まだ記事がありません

contact

お気軽にご相談ください

軽量・薄肉ダイカスト 開発センターは、皆様に高品質・コストダウン・製造リードタイムの短縮といったメリットを提供します。