
精密部品の製作では、切削加工によって高い寸法精度を確保するケースが多くあります。
一方で、量産段階に入ると、加工時間の長さや材料ロス、部品点数の多さがコスト面の課題になることがあります。
こうした場合に検討されるのが、アルミダイカストへの工法転換です。
ダイカストは、金型に溶かした金属を流し込み、短いサイクルで同じ形状の部品を成形できる加工方法です。切削加工ですべてを削り出すのではなく、ダイカストでおおよその形状を作り込み、必要な箇所だけを機械加工で仕上げることで、加工時間や材料ロスを抑えられる場合があります。
ただし、精密部品をダイカスト化する際は、単純に「切削品をそのまま鋳物に置き換える」という考え方ではうまくいきません。
求められる精度、肉厚、強度、後加工の範囲、量産数量などを踏まえ、ダイカストに適した形状へ見直すことが重要です。
この記事では、精密部品をダイカスト化する際の考え方や、切削加工から置き換えを検討する際のポイントを解説します。
精密部品をダイカスト化する目的
精密部品をダイカスト化する目的は、単に部品単価を下げることだけではありません。
製品によっては、加工工数の削減、軽量化、部品の一体化、組立工数の削減など、複数の効果が期待できます。
加工時間を短縮できる
切削加工は、ブロック材や丸棒材から不要な部分を削り出して形状を作る加工方法です。高い精度を出しやすい一方で、形状が複雑になるほど加工時間が長くなります。
ダイカストでは、金型の中で部品形状を成形するため、量産時には短いサイクルで同じ形状の部品を製作できます。
特に、削り代が多い部品や、加工工程が多い部品では、ダイカスト化によって製造時間を見直せる可能性があります。
材料ロスを抑えやすい
切削加工では、最終形状にするまでに多くの材料を削り落とすことがあります。
一方、ダイカストは金型内で完成形状に近い状態まで成形するため、材料ロスを抑えやすい加工方法です。
材料費の上昇や、アルミ材の使用量削減が求められる製品では、この点もダイカスト化を検討する理由になります。
複数部品を一体化できる
精密部品の中には、複数の切削部品や板金部品を組み合わせて構成しているものがあります。
ダイカストでは、リブ、ボス、取付座、ケース形状などを一体で成形しやすいため、部品点数や組立工数の削減につながる場合があります。
また、鉄や真鍮などの部品をあらかじめ金型にセットして成形するインサート成形を活用すれば、ねじ部や補強部を一体化することも可能です。
後工程の組立や追加加工を減らしたい場合には、有効な選択肢になります。
軽量化・薄肉化につながる
アルミダイカストは、鉄系材料に比べて軽量で、複雑な薄肉形状にも対応しやすい加工方法です。
ケース、カバー、ブラケット、ハウジングなどでは、強度を確保しながら肉厚を見直すことで、軽量化につながることがあります。
ただし、薄肉化を行う際は、湯流れや剛性、変形を考慮した設計が必要です。単に肉厚を薄くするのではなく、リブ配置や金型方案を含めて検討することが重要です。
切削加工からダイカストへ置き換えやすい精密部品

すべての切削部品がダイカスト化に適しているわけではありません。
一方で、次のような部品は、ダイカスト化によってコストや工数を見直せる可能性があります。
・削り代が多く、材料ロスが大きい部品
・複雑形状のため、切削加工に時間がかかっている部品
・複数部品を組み立てて使用しているケース・カバー・ブラケット類
・一部の面だけ高い精度が必要な部品
・軽量化のために肉抜きやリブ構造を検討している部品
・量産時の加工能力や納期が課題になっている部品
特にポイントになるのは、「すべての面に切削精度が必要かどうか」です。
たとえば、外形や肉抜き形状、リブ、ボスなどはダイカストで成形し、嵌合部やシール面、軸受け部など精度が必要な箇所だけを機械加工で仕上げる方法があります。
このように、鋳造で作る部分と、後加工で仕上げる部分を分けて考えることで、精度を確保しながら加工工数を抑えやすくなります。
精密部品をダイカスト化する際に確認しておきたいポイント
精密部品をダイカスト化する際は、初期段階でいくつか確認しておきたい点があります。
ここを整理しておくことで、後工程での手戻りや、想定外のコスト増加を防ぎやすくなります。
必要な精度を部位ごとに分ける
精密部品では、図面上のすべての寸法が同じ重要度とは限りません。
相手部品と組み合わさる面、シール性が必要な面、軸やベアリングが入る部分などは高い精度が必要になります。一方で、外観面や肉抜き部などは、そこまで厳しい公差を必要としない場合もあります。ダイカスト化を検討する際は、まず「鋳造のままでよい部分」と「機械加工で仕上げる部分」を分けることが重要です。
この整理ができると、必要以上に加工範囲を広げず、コストを抑えやすくなります。
薄肉化は、湯流れと強度を見ながら検討する
軽量化を目的に、肉厚を薄くしたいという相談は多くあります。
ただし、薄くしすぎると、溶けた金属が金型の隅々まで行き渡りにくくなることがあります。
そのため、薄肉化では、製品形状だけでなく、金型内での金属の流れ方、ゲート位置、リブの配置、厚肉部とのバランスを含めて検討する必要があります。
設計初期の段階から相談することで、軽量化と成形性を両立しやすくなります。
金型費と量産数量のバランスを見る
ダイカストでは、量産前に金型を製作する必要があります。
そのため、試作だけで完結する部品や、形状変更が頻繁に発生する部品では、金型費とのバランスを確認する必要があります。
一方で、一定数量以上の生産が見込まれる場合や、切削加工の工数が大きい部品では、金型費を含めてもトータルコストを下げられるケースがあります。
単品単価だけでなく、材料費、加工費、組立工数、検査工数、量産時のリードタイムまで含めて比較することが大切です。
精密部品のダイカスト化で重要なのは、作り方の見直し
切削加工品をダイカスト化する際に重要なのは、既存形状をそのまま置き換えることではありません。
ダイカストで作りやすい形状、強度を確保しやすい肉厚、後加工を減らしやすい構造に見直すことで、はじめて工法転換の効果が出やすくなります。
たとえば、切削では加工しにくい深いポケット形状や複雑なリブ形状でも、ダイカストであれば一体成形できる場合があります。
また、複数部品を組み合わせていた構造を一体化できれば、部品点数や組立工数の削減にもつながります。
精度が必要な箇所については、ダイカスト後に必要最小限の機械加工を行うことで対応します。
このように、鋳造と機械加工を組み合わせて考えることが、精密部品のダイカスト化では重要です。
精密ダイカスト部品の製造はお任せください
帝産大鐘ダイカスト工業では、薄肉成形、高精度成形、インサート成形、機械加工、検査までを含めたダイカスト製品の製作に対応しています。
薄肉成形では、最小肉厚0.3mmの実績があり、軽量化が求められる部品にも対応しています。
また、素材寸法公差±0.05mmを実現する製造ノウハウを活かし、精度が求められる部品についても、金型方案や加工範囲を含めた提案が可能です。
さらに、ダイカストからバリ取り、機械加工、圧漏れ検査まで社内一貫体制を構築しているため、鋳造だけでなく、量産時の品質安定まで見据えた対応ができます。
切削加工からダイカストへの工法転換を検討している方、精密部品の軽量化・薄肉化を進めたい方は、図面や3Dデータをもとにお気軽にご相談ください。
当社の製造実績をご紹介
タービンブレード(産業機械業界)

製品概要・仕様
業界: 産業機械
材質: ADC12
仕様: 肉厚 0.3mm(先端部) 効率的なエネルギー生成を実現するため、当社の薄肉技術を結集して製作したタービンブレードです。
トランスファーケース(自動車業界)

業界:四輪自動車
材質:ADC12
仕様:肉厚 3mm / 重量 1.6kg
ロボットを活用した製品の自動挿入・取り出しにより、手作業のサイクルタイムを70秒から55秒に短縮し、生産効率の向上と品質の安定化を実現したインサート成形のトランスファーケースです。
>>>トランスファーケース(自動車業界)の詳細はこちら
まとめ
精密部品のダイカスト化は、切削加工をすべてなくすための方法ではありません。
ダイカストで形状を作り込み、必要な箇所だけを機械加工で仕上げることで、精度を確保しながら、加工時間、材料ロス、組立工数を見直すための工法転換です。
特に、削り代が多い部品、複雑形状の部品、軽量化が求められる部品、複数部品を組み合わせている部品では、ダイカスト化による改善余地があります。
製品形状や必要精度によって最適な方法は異なるため、量産を見据えた初期段階から、鋳造・加工・検査を含めて検討することが重要です。