
ダイカスト金型は、溶融した金属が高速かつ高圧で射出され、大きな負荷がかかります。鋳造ロット数も多く、繰り返し負荷がかかるため、金型は故障が起こりやすい状態になります。
金型寿命を延ばし、ダイカスト製品の不良率を最小限にするためには、金型を設計する際の細部への配慮が不可欠です。ここでは、金型設計における重要なポイントと、金型レイアウト時の注意点について解説します。
金型設計に関する注意点
ダイカスト金型の構造は、固定型、可動型、スライドコアで構成されています。一般的には固定型・可動型は主型と入子型に分けて作り、入子型にキャビティを彫込む方法がほとんどです。
ここでは金型設計を5つのポイントに分けてご説明します。
(1)組立図

組立図とは、固定型、可動型式およびキャビティ、可動中子、ダイベース、押出し板、ガイドピン、リターンピン、押出しピン及び湯口等が組み合わされた状態の図面です。この図には各部品の位置、寸法、主要な断面が詳細に示されています。
組立図は使用するダイカストマシンの仕様や、金型取り付け面のサイズや形状、ボルト固定位置などを配慮して、設計する必要があります。
(2)彫込寸法図
彫込寸法図は成型後の製品を、狙いどおりの寸法、形状にするために不可欠な図面です。
キャビティを示す寸法には、使用する合金が凝固時に収縮する寸法を考慮した縮み代を加えて表示する必要があります。簡易的ながら実用的な方法として、製品図に縮み代を織り込んだ寸法を赤字で加筆し、彫込寸法図として代用することも可能です。
(3)入れ子ピンの寸法

入れ子ピンは金型本体の損傷を防いだり、ガス抜きを促進するなど、製品の品質や、金型の耐久性、生産効率に影響を与えます。
彫込寸法図に示す入れ子ピンの直径は、一般にキャビティの公差の大きい側を上限とし、製品の全公差の25%をマイナスとした部分を下限として考慮する必要があります。
(4)湯口方案図
湯口方案図は湯口からランナー、ゲート、キャビティ、オーバーフロー及びエアベントなどを正確に指示した図面です。溶融金属が金型内に適切な速度でスムーズに流入し、かつ乱流や空気の巻き込みを防ぐよう設計する必要があります。また、湯口や押湯は必要最低限のサイズに抑えることで、材料の無駄を減らし、歩留まりを向上させることができます。
(5)冷却水管図
冷却水管図は主型、キャビティ、可動中子及び湯口部品などの冷却水管を図示し、その冷却構造を合わせ指示した図面です。設計時には、均一かつ安定した温度分布を実現することが不可欠です。金型の形状や製品の肉厚の分布に合わせて、冷却水路を最適な位置と深さに配置する必要があります。
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金型レイアウト時の注意点
金型レイアウトは、金型をダイカストマシンに設置し、実際に生産を行う上での総合的な効率と安全性を考慮する工程です。
(1)使用するダイカストマシン

製品の投影面積、鋳造重量、型開き力などを計算し、それに合ったダイカストマシンを選定することが重要です。金型の主型、押出し機構、可動中子、およびダイハイトを確認し、使用するマシンを決定する必要があります。金型をダイカストマシンに分解せずに取り付けることができるよう配慮することで、生産効率を向上させることも可能です。
(2)金型の剛性
型締め力、鋳造圧力及び熱膨張による歪みなどを考慮して、金型の剛性を確保することが必要です。主型、ダイベースの大きさ及び構造、摺動面のクリアランス、加熱及び冷却のバランス、ランナー、ゲートの配置に留意し、金型が安定して稼働する状態を確保する必要があります。
(3)組立図にタイバーなどの位置表示
金型のレイアウト時には、ダイカストマシンのダイブレード、タイバー、押出し機構、取り付け金具などの位置関係を想像線で記入すると金型設計がよりよくなります。
まとめ
ダイカスト金型設計は、製品品質、生産効率、金型寿命、を左右します。今回ご紹介した各設計図の役割と、金型レイアウト時の細かな配慮は、それぞれが複雑に連携し合い、最終的な製品品質に直結します。これらのポイントを深く理解し、常に最適化を図ることで、高品質なダイカスト製品の安定的な生産が実現します。
軽量・薄肉ダイカスト開発センター.comを運営する帝産大鐘ダイカスト工業には、国家資格であるダイカスト技能検定員が3名在籍しております。
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