
EVシフトの加速やあらゆる産業におけるエネルギー効率化の流れの中で、軽量化は常に中心的な課題として位置づけられています。製品が軽くなることで、自動車であれば燃費の劇的な向上につながり、ロボットアームであれば、より高速かつ精密な動作が可能になります。
こうした軽量化を実現するには、各種部品の軽量化が欠かせません。私たちアルミダイカストメーカーにとっては、薄肉ダイカスト技術がその鍵を握ります。しかし、単に製品の肉厚を薄くすれば、当然ながら強度は低下します。一方で、軽量化を追求すればするほど、製品に求められる剛性・耐久性・安全性が損なわれる可能性もあります。このように相反する要素のバランスをいかにとるかが、非常に重要な課題となります。
ヒートシンクと焼き付き問題
薄肉ダイカストの難しさを象徴する部品の一つが、ヒートシンクです。アルミニウム溶湯は約660℃以上の高温で金型内に射出されますが、肉厚の薄い部分では熱が急速に金型に奪われてしまいます。その結果、溶湯が製品の隅々まで行き渡る前に固まってしまい、湯廻り不良や製品と金型が固着してしまう焼き付きといった問題が頻発します。特に、無数の薄いフィンが並ぶヒートシンクでは、フィン部が金型に食い込むように固着し、製品の取り出し時に変形や破損を引き起こすリスクが非常に高くなります。
この課題に対して、私たちは二つのアプローチで解決を図っています。第一に、金型設計の最適化です。焼き付きが起きやすい箇所から効果的に製品を取り出すため、押出しピンの配置をミリ単位で設計・調整します。第二に、材料の選定です。一般的に使用されるADC12と比べ、シリコン含有量が多く流動性に優れ、焼き付きが起きにくいHT-1材を採用しています。
薄肉ダイカストで強度を確保するために
薄肉ダイカスト製品は、軽量化に大きく貢献する一方で、その薄さゆえに強度の確保が極めて重要となります。特に冷却時の変形を防ぎ、内部品質を保証するためには、以下の2つの技術的アプローチが不可欠です。
まず、製品を一度水槽に浸漬させ、全体を急冷かつ均一に冷却します。このひと手間によって、製品内部に発生する応力を最小限に抑え、高い寸法精度と強度を確保することができます。この技術は、特に高い剛性が求められる自動車のステップ材部品や、ライトの支えといった製品で効果を発揮します。
次に、ピンポイントの温度計測ではなく、金型内を流れる溶湯の挙動、温度分布、凝固過程を流動解析によって可視化します。これにより、製品全体の品質を科学的に予測し、内部欠陥の発生を防ぐとともに、強度を最大化するための最適な金型設計や鋳造条件を導き出します。