薄肉ダイカストにおける主要な不良とその対策

薄肉ダイカスト
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薄肉ダイカストは、製品の軽量化や複雑な形状の部品を製造するのに不可欠な技術です。しかしその特性上鋳造不良が発生しやすいという課題があります。本コラムでは薄肉ダイカストの製造において発生しやすい不良とその対策についてご説明します。

薄肉ダイカストに起こりやすい不良:①湯廻り不良・湯じわ

原因

溶湯の温度:

溶湯温度が適正範囲より低いと流動性が低下し、金型の細部にまで行き渡らなくなります。使用する合金の種類も影響します。

充填速度と圧力:

圧力が不足していると金型の細かい部分まで充填されず、充填速度が遅いと充填完了前に凝固します。

金型設計の問題:

ランナーやゲートの設計が適切でない場合、溶湯の流れが均一にならず、充填不足が発生することがあります。ガス抜きが不十分な場合も、ガスの逃げ場がなくなり充填不足の原因となります。

対策

溶湯温度を適正範囲に保ち流動性を確保し、金型温度を調整することで均一な充填を実現することが重要です。適切な射出圧力と速度を設定し、安定した充填を促します。ランナーやゲートの設計を見直し、溶湯の流れを均一にすることで充填不足を防ぎます。流動性の高い素材の選定と、それに適した鋳造条件を設定することも有効です。

また当社では、溶湯充填時に金型との接触が大きくなり熱が奪われやすい薄肉部において、冷却が均一に行われるよう、金型内の温度が上がっている箇所を特定し、その場所に合わせて離型剤を充てる位置を変更することで、適切な冷却と湯流れの安定化を図っています。

朝夕や季節による温度変化も考慮し、常に最適な冷却状態をするなどの対策を行っています。

薄肉ダイカストに起こりやすい不良:②ブローホール(内部気泡)

原因

空気の巻き込み:

溶湯の高速射出により、キャビティ内の空気やスリーブ内の空気が巻き込まれることでブローホールが発生します。

潤滑剤・ガスの巻き込み:

離型剤などの潤滑剤が金型内で分解されてガスを発生させ、それが溶湯に巻き込まれブローホールが発生します。

不均一な冷却:

薄肉品では冷却が不均一になりやすく、気泡が形成される可能性が高まります。

対策

空気の巻き込みに対しては、射出スリーブの充填率を上げることが主な対策となります。また、オーバーフローやエアベントの位置・大きさの調整、射出速度や金型内部の圧力調整など様々な調整が必要です。潤滑剤やガスの巻き込みに対しては、潤滑剤の種類を変更したり、塗布量を低減したりするなども有効な不良対策です。

当社ではブローホール対策として、ブローホール発生の主要因となる空気やガスの閉じ込めを防ぐために、エアベントを適切に設置し、金型内部のガスを効率的に排出しています。金型のガス抜きが良好な状態であれば湯気が出ることからも、その状態を常に確認し、問題の早期発見に努めています。また潤滑剤がガス発生源とならないよう、白チップ潤滑剤を使用し、ブローホールを含む不良部品を改善しています。これにより、鋳造プロセス中に発生するガスの量を抑制します。

他にも固定型と可動型を毎回拭くことで、金型を常に清浄な状態に保ち、内部気泡を徹底的に抑制しています。

薄肉ダイカストに起こりやすい不良:③ひけ巣

原因

凝固収縮:

溶湯が液体から固体へ変化する際に体積が減少し、その減少分を補給しきれない場合に空洞として残ります。

溶湯補給の不足:

薄肉部が先に凝固してしまうと、厚肉部への溶湯の供給が遮断され、ひけ巣が発生しやすくなります。

対策

凝固収縮分を補うため、凝固の際に十分な押湯を行うことが最も重要です。他にも、冷却を強化することで凝固をコントロールし、一定方向に凝固を進行させる指向性凝固を促すことも有効な対策です。ゲートの位置、厚さ、断面積の最適化や、圧力の調整、鋳造温度の変更も対策として挙げられます。

また当社では、金型の設計段階から、フィンの先端部といったひけ巣が発生しやすい箇所に押しピンを配置するなど対策を講じることで、引け巣を抑制しています。溶湯が凝固する際に十分な押湯が供給されるよう、ピンがその経路を確保する役割も果たします。万が一、ひけ巣発生部が金型に残ってしまうような事態が発生した場合には、金型をどぶづけして薬品で溶かすといった処置を迅速に行うことで、生産ラインへの影響を最小限に抑え、安定した生産体制を維持しています。

薄肉ダイカストに起こりやすい不良:④焼付き

原因

摩擦による破壊:

アルミと金型間の摩擦により、アルミが破壊され金型に溶着する場合があります。

鋳抜きピンへの接触:

精密局部加圧法において、鋳抜きピンが溶湯充填中に挿入されると、熱量を持った溶湯が直接ピンに触れることで、焼付きが発生することがあります。

対策

対策としては冷却の強化が重要であり、溶湯充填時や離型剤塗布時の金型温度を厳密にコントロールすることが必要です。また、金型への溶着を根本的に防ぐために、金型にアルミが反応・溶着しにくい表面処理を実施することも有効です。

当社では、焼付き対策として、金型表面の過熱を防ぐため、温度が上がっている箇所の特定と、集中的な冷却を行うなど、金型温度の管理を徹底しています。また、金型と溶湯の間の摩擦を低減するために離型剤の種類を慎重に検討しています。離型剤を塗る際は、金型に適切な場所に塗ぬられているかを確認するために、流量計をつけて正しく当たっているかチェックしています。さらに、ロボットによる自動塗布であっても、スプレーを充てる位置を必ず目視で確認し、塗布もれや不均一な塗布を防ぎ、焼付きのリスクを最小限に抑えています。

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まとめ

薄肉ダイカストは、部品の軽量化に有効な技術ですが、湯回り不良・湯じわ、ひけ巣、焼付き、ブローホールといった不良が発生しやすいという課題があります。これらの不良は、溶湯の条件、金型設計、冷却条件など、様々な要因が複雑に絡み合って発生します。これらの不良に対しては多角的な視点からの対策が必要です。

当社では薄肉ダイカストで生じる湯廻り不良、湯境、湯じわといった鋳造欠陥に対して、創業より培ってきた鋳造に関する知識や経験・実績をもとにした分析力、そして正しい対処法を導き出す高い技術力を基盤に、積極的に鋳造方案・湯口方案の最適化提案をしております。最大2.24mm ⇒ 0.3mmの薄肉化の実績もございますので、他社では難しい肉厚の製品がございましたら、豊富な実績を持つ当社にご相談ください。

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