アルミダイカストは、その優れた特性により、複雑な形状の部品を高い精度で大量生産し、大幅な軽量化を実現することができます。
本記事では、アルミダイカストの基礎知識を徹底解説します。
アルミダイカストとは?
アルミダイカストとは

アルミダイカストとは、アルミニウム合金などのアルミを含む溶融金属を、精密な金型の中に高速・高圧で射出・充填し、急速に凝固させる鋳造方式です。高精度で外観の良いアルミ製品を短時間にハイサイクルで生産できます。
なぜアルミが選ばれるのか?
ダイカストの金属材料には、アルミ合金のほかに亜鉛合金やマグネシウム合金などが使われますが、その中でもアルミが95%以上を占めています。アルミニウムが利用されるのには理由があります。
- 軽さ:アルミニウムは鉄の約1/3の比重(2.7g/cm³)であるため、製品の軽量化に効果的です。自動車部品の軽量化は、燃費向上や運動性能向上に直結する重要課題であり、アルミダイカストは必要不可欠な製造方法です。
- 熱伝導性:アルミは熱伝導性が高いという特性を持ちます。この特性から、コンピュータや電子機器の熱を効率的に逃がす部品であるヒートシンクの材料として使用されます。
- リサイクル性:アルミは腐食しにくく、溶融温度が低いため、使用済み製品を簡単に再生することができます。再生に必要なエネルギーは、新地金製造時のわずか3%であり、資源循環やCO2排出量削減といった環境負荷低減につながります。
アルミダイカストのメリット

メリット①:複雑な形状を大量生産可能
アルミダイカストのメリットの1つは、高い生産性と形状の自由度です。
- 大量生産によるコスト低下:溶融金属の充填を高速で完了させるため、短時間で大量生産に優れています。金型を繰り返し使うことで、同じものを大量に効率よくつくることが可能となり、製品一つあたりのコストを大幅に削減できます。
- 複雑形状と一体成形:鋳造を用いると、複雑な形状でも1回で継ぎ目なく生産できます。ダイカストは設計の自由度が高いため、複数の部品(鉄部品、プレス部品、切削部品など)を一体成形することで、部品点数や組立工数を削減し、コストダウンを実現できます。
メリット②:高い寸法精度と薄肉化の可能性
ダイカストは他の鋳造法と比べても、高い精度を実現できます。
- 高い寸法精度: ダイカスト製品の寸法精度は、JISの鋳造品の寸法公差でCT5~7等級に相当し、砂型鋳造(CT9~12)や金型鋳造(CT6~8)よりも高い水準です。さらに、高圧をかけて充填するため、表面が美麗で平滑な鋳肌が得られ、後加工が不要な場合もあります。
- 薄肉化:ダイカストは、砂型鋳物や金型鋳物に比べて肉厚を薄くすることができます。一般的に小物製品で0.8~3.0mmが目安ですが、条件によってはさらに薄肉にすることも可能です。当社は0.3mmの実績があります。
アルミダイカストと他の鋳造法との違い
製造工程・精度の比較
アルミ鋳造は大きく「鋳物」と「ダイカスト」に分けられます。それぞれの製造法には一長一短であり、製品の形状や生産量に応じて使い分けられます。

プレス加工・切削加工との比較
アルミダイカストは、鋳造という成形加工法のため、塑性加工であるプレス加工や、金属を削る切削加工とは根本的に異なります。
- 切削加工との違い:切削加工は、少量生産や極めて高い寸法精度が求められる場合に適しています。一方、アルミダイカストは、高い精度の製品を大量生産し、加工レス化や仕上げ工程を最小限にすることで、コストダウンを追求するのに最適です。ただし、強度だけを比較した場合、ダイカスト製品は内部に応力が残るため、切削加工の方が高い強度が得られる場合があります。
- プレス加工との違い: プレス加工では複数の部品が必要になる複雑な形状でも、ダイカストでは金型一つで一体成形が可能です。複数の部品を一体化することで、軽量化や組立コストの削減に繋がります。
アルミダイカストの材質(合金)の種類と用途
アルミの鋳造用合金は、AC(鋳物用)とADC(ダイカスト用)の記号で区別されます。製品の用途に応じて、強度、耐食性、熱伝導性などの特性を考慮して最適な合金を選択することが重要です。
ADC12の特徴

国内で生産されるダイカスト鋳物の90%以上を占めているのが、ADC12です。
- 特徴:ADC12はAl-Si-Cu系合金であり、機械的特性、被削性、鋳造性のいずれにおいても高いレベルでバランスがとれた素材です。
特殊合金
ADC12以外にも、製品に求められる特性に応じた様々な合金が活用されています。
- 強度・耐圧性重視:ADC10(Al-Si-Cu系)は、ADC12と同様に強度と鋳造性のバランスがよく、耐圧性にも優れるため、よく使用されます。
- 耐食性重視:ADC1(Al-Si系)やADC3(Al-Si-Mg系)、ADC5(Al-Mg系)、ADC6(Al-Mg-Mn系)などは耐食性に優れています。特にADC5は耐食性が非常に高いですが、鋳造性がよくないため複雑な形状には不向きです。
- 高放熱性・軽量化重視:近年の技術トレンドとして、熱伝導率の高い特殊合金が注目されています。例えば、ADC12と比較して高放熱性を持つHT-1やDMS6、Al-25%Si合金などがあり、これらは主にヒートシンクやLEDランプ用筐体など、熱対策が求められる部品に用いられ、製品のコンパクト化、軽量化に貢献しています。
アルミダイカストに求められる「薄肉・軽量化」
薄肉化・軽量化が求められる理由

現在、製造業界、特に自動車業界では、軽量化のニーズが高まっています。
- EV化と軽量化:サステイナブルな製造への取り組みや、EV化の進展により、走る歓びと環境性能の両立が求められています。車両の軽量化は、燃費の改善に大きく貢献するため、鋳造部品の開発における最重要課題です。
- 環境貢献:軽量化は、材料の使用量を減らすためコスト削減に繋がるだけでなく、輸送コスト削減や環境負荷低減にも貢献します。また、アルミは再生エネルギーが少ない特性を持つため、リサイクルを通じて循環型社会の形成に寄与します。
薄肉化を実現するための課題と解決策
薄肉化はコスト、軽量化、品質の向上に寄与しますが、その実現には克服すべき技術的課題が伴います。特に湯まわり性と強度の確保は、薄肉化の成否を分ける重要なポイントです。
- 課題①:湯まわり不良の発生 肉厚が薄くなると、溶湯が金型内を流れる途中で温度が急激に低下し、健全に製品に行き渡らなくなり、「湯じわ」や「湯境(ゆざかい)」といった湯まわり不良が発生しやすくなります。
- 対策
- CAE解析の活用:湯流れ(溶湯の流動現象)の実態を把握し、湯まわり不良を事前に検証することが不可欠です。
- 金型設計の工夫:溶湯が凝固する前に充填を完了させるため、ゲート断面積を大きくしたり、ランナーを増速型にしたりする設計が求められます。
- 高流動性合金:Al-25%Si合金やHT-1といった流動性の良い特殊合金も、薄肉化の有効な手段です。
- CAE解析の活用:湯流れ(溶湯の流動現象)の実態を把握し、湯まわり不良を事前に検証することが不可欠です。
- 対策
- 課題②:強度・靭性の確保:薄肉化すると、製品の強度や剛性が低下するリスクがあります。特に薄肉大型の自動車部品などでは、従来の鋳物材料を超える、靭性が求められます。
- 対策
- 高真空ダイカスト:従来のダイカストの課題である鋳巣を抑制するため、金型内の空気を高速排気して高い真空度(2~3kPa)を実現するHiGF法などの技術が開発されています。これにより製品内のガス含有量が少なくなるため、熱処理(T7熱処理)が可能になり、強度と伸び値が改善されます。
- 構造設計:リブや補強構造を適切に配置し、薄肉化による強度低下を補い、剛性を確保する設計ノウハウが重要です。
- 高真空ダイカスト:従来のダイカストの課題である鋳巣を抑制するため、金型内の空気を高速排気して高い真空度(2~3kPa)を実現するHiGF法などの技術が開発されています。これにより製品内のガス含有量が少なくなるため、熱処理(T7熱処理)が可能になり、強度と伸び値が改善されます。
- 対策
高精度・薄肉ダイカストならご相談ください
アルミダイカストは、アルミニウムの軽さ、熱伝導性、リサイクル性といった優れた特性を活かし、高精度、大量生産、複雑形状の実現を可能にする製造技術です。
軽量・薄肉ダイカスト 開発センターを運営する帝産大鐘ダイカスト工業株式会社は、不良ゼロを目指し、他社で断られた部品や、なかなか不良が減らない部品についての製造も承っております。流動解析データを基に金型更新や設計変更のご提案も可能です。
ダイカスト部品に課題をお持ちでしたら、ぜひ一度ご相談ください。最新のジェットクールシステム、真空装置、熟練技術者による解析力で、難易度の高いダイカスト製品の量産化もサポートいたします。